クレームの話
あんまり人と揉めたくないので腹が立つことがあったら何も伝えず関係をフェードアウトするタイプです。
(余談ですがこのせいで恋人ができても長続きしません)
なのでお店にクレームを1回も入れたことがなかった。
たとえ本人に言ったところで、はたまた偉い人が出てきて謝罪されたところで、ムカついた気持ちがなくなるわけではないので。
そんなわたしが人生で一度だけクレームを入れた話です。
当時よく行ってた立ち飲み屋の隣に、お魚系のこじんまりとした居酒屋があってずっと気になっていた。
いつもカウンターは常連らしき人がチラホラ座っていて、ガラス越しに見える店主は渋くていいツマミを作りそうだったので、機会があったら行ってみようかなと思ってた。
その日は立ち飲み屋が休みで、チャンスだと思いそのお店に1人でチャレンジしてみたのです。
カウンターには1人先客がいて、店主と世間話をしていた。
入店すると60代くらいの女性が、おひとりですか?とブスッとしながら聞いてきたので嫌な予感がしながらも「はい」と答えたら、なぜかカウンターではなく店主からは死角の狭くて暗い席に通される。
店主はわたしに気付いていないようだった。
なんでカウンターに通されないんだろう…
と思いながらもまあ別にいいかとその席に座り、瓶ビール、筑前煮とお刺身を頼んだ。
お通し代300円頂きます、と書かれているのに、なかなかお通しが来ずに刺身だけ先に届いたので「…?」と思いながらも刺身だけでビールを飲む。
30分くらい飲んでたら、カウンターから「えっ、お客さん来てるの?」「お通しは?」「オーダーの字が汚くてなんて書いてあるか読めないよ」という店主の声が聞こえてきた。
なんか揉めてはる、と思っていると店主が済まなそうな顔で「お通しです…すみません遅れて」と持ってきてくれたので、いえいえ、と受け取った。
お通しは大根と竹輪を煮込んだもので、筑前煮をオーダーしたので「煮物かぶりしちゃったなあ。でも煮物ならいくらでもいけるし」と思いながら食べた。味は美味しかった。
それから20分経っても筑前煮が来ない。
店主の顔見えないし、わたしがいる席からはさっきの店員さんの姿しか見えないのでその人に「すみません、筑前煮まだですか?」と聞いたらなんと
「お通しが筑前煮だったんでキャンセルしときました」
と言う。
「はっ?」
わたしの固まった顔を見て何かを察したのか、
「すみません、一言いえばよかったですね」
と謝ってきた。
一言いえばいいとかそういう事ではなく、客が注文したものを勝手にキャンセル…?
今までに聞いた事のない斬新な対応だ。
しかもお通しは煮物ではあるけど筑前煮じゃないし。
恐らく店内の会話と接客の様子から言っても、この人はアルバイトか何かで、新人かもしれないし…。
でもこの対応はありえない。
「このお店では客が注文したものを勝手にキャンセルするんですか?」
数秒の葛藤ののち、意を決して聞いてみた。ちょっと頭に血が上って嫌な言い方になったかもしれない。なんせ初クレームだ。そこは大目に見て欲しい。
その女性店員は「すみません」とぺこりと頭を下げたので、これ以上責めても…と思って会計してもらい、店を出た。
めちゃめちゃ嫌な気分だった。
なんで楽しく酒を飲もうと行った店でこんな対応をされなきゃいけないのか。
一応謝ってくれたにも関わらず、店員さんにクレームまがいのことを言った自分にも腹が立っていた。
結局その日はいつも行く店に飲み直しに行って、店主に話を聞いてもらって機嫌を直して帰った。
ささやかな復讐として店の名前は出させていただきました。
ちなみにこの話は3年くらい前なんですけど、未だに思い出してはぶちぶちと怒っているので筑前煮の恨みは相当深いです。
食べたかった、筑前煮。